1月21日東京にて

夕方、南西の空からやって来た宇宙ステーションを見ていた。金星をかすめ、旅客機を振り切り、圧倒的な速度で東京の空を渡る光をただ、見ていた。 『機銃掃射をも圧倒するかのように咆哮する自動車は、《サモトラケのニケ》よりも美しい。』 その迷いのない…

Tong Poo

2年ぶりに中国の地を踏んだときには、もう夜はすっかり更けていた。上海地鉄の駅を出て夜風に当たると、風の芯にある八角の香りが中国に来た感を強くさせる。しかし、その肌合いは以前訪れた北京のそれとは少し違っていた。この違いは2年という月日を、それ…

田舎の景色

白い荒地を走る列車の中、ボックスシートの片隅。僕は肘をついてぼんやりと、ただ、待っていた。ただ待っていたって、何を? 閑散とした鈍行列車での1人旅、この車内には待たせるものも待っているものもないはずだ。目の前には、がらんとした2人がけの椅子。…

東京の印象

久しぶりに地元の友達に会うと、決まって東京で暮らすのはどんな感じかと聞かれる。 東京で暮らしていると言っても、僕の生活の大半は大学とその関係のコミュニティで行われるので、結局大学生活の感想になってしまう。そう言うとなんだかみんな面白くなさそ…

1月第3週京都にて

中学生の時から愛読している本の1つに川端康成の古都がある。 古都の作中では祇園祭、時代祭など色とりどりの京都の晴れ姿が描かれる。 中高生の僕は京都のケの中に過ごしていたからこそ、古都の輝きはこの小説の中でしか見られないことがわかって、なんど…